重なる身体と歪んだ恋情
どういう意味なのだろう?

手を繋いでってこと?

差し出された手をじっと見ているとクスリと笑う声が落ちてきて。


「こういった晩餐会では腕を組んでいくものなのですよ。今から慣れておかないと」

「あ、はい」


そう、だったかしら?

確かにおぼろげな記憶の中で父と母は腕を組んで歩いていたような……?

ううん。

参考にはならないわ。

だってあの二人は私たちと違って本当に仲がよかったもの。

だからといって差し出された手を無視することは出来るはずも無く、


「……」


そっと彼の右手を取ると彼の手が左腕に導いていく。

私の手は彼の肘辺りを掴まされて。


「こんな感じで。いいですか?」


あぁ、こんな感じだった。

私の記憶になる父と母。

その姿を思い浮かべながら、


「えぇ」


そう答えてジャケット越しに彼の腕を少しだけ強く掴んだ。
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