重なる身体と歪んだ恋情

「何か欲しいものは?」


そう言われても……。


「欲しいものなんて、ないわ」


違う。

あるけれどそれはお店には置いてなくてお金では買えないもの。

だからそう言ったのに。


「なら帰られますか?」

「嫌っ」


即座にそう答えると如月は吹き出すように笑った。


「なっ、笑うなんて失礼だわ!」

「これは失礼しました。それではどちらに参りましょうか? お茶を召し上がるときのカップを見に行かれるとかどうです? お気に入りのカップですとお茶も美味しく感じられますよ」


街を歩きながら如月はいろんな提案をしてくれる。

ドレスに似合った靴とかバッグ、綺麗な髪飾りに部屋に飾るための花瓶、それから本屋さん。


「如月、英語の本が欲しいわ」


奏さんの書斎には英語の本は沢山ある。けれどそれは私にはどれも難しく数ページで諦めてしまうほど。だから、


「私でも読めるような」


そう伝えると如月は少し驚いたように私を見て、それから、


「畏まりました」


と恭しく頭を下げた。

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