重なる身体と歪んだ恋情
「最初は童話などからのほうが入りやすいかもしれませんね」
「童話? それくらい私にだって――」
「結構難しいですよ? 倒置法なんかも入ってますし主語が省略されてる場合も多いですから」
「……」
思うのだけど、如月は意地悪だと思う。
「いいわ、如月に任せるから」
「如月様」
私がすべての台詞を言い終わる前に、如月を呼ぶ声が遮った。
振り向けば、
「八重様、ご無沙汰しております」
この前ドレスを作ってくれた八重さんが笑っていた。
そう、笑っているのに冷たい目で。
「今日はこちらでドレスを? 私のところへはお寄りにならないのかしら?」
「――あ、あのっ」
「桐生から八重様はお忙しいと聞いておりましたからご遠慮させていただきました」
私より半歩前に出て如月が軽く頭を下げる。
「あら、奏様は私が忙しいかどうかなんてお知りにならないと思っていたのに」
カツンと八重さんのヒールが石畳を叩く。
「そのようなことは。ことのほか気にかけておられますよ」
「白々しいっ!」
引き攣った笑顔で吐き出される台詞に、思わず私の肩が震えてしまった。