重なる身体と歪んだ恋情
ゆっくりと振り返ると階段を上ってくる奏さんの姿が見えて……。


「別に。彼女とお話をしてるだけですよ」


彼の質問に返したのは大野先生。

私はと言うと奏さんの冷たい視線に目を見開くことしか出来ない。


「お話。それは抱き合ってするようなお話で?」

「彼女を一人放っておくと言うほうが僕には理解に苦しむけど?」


挑発的な大野先生の台詞に眉をひそめる奏さん。


「遊びで来てるわけではないので」

「妻以外の女性と踊るのが仕事とはね」


乾いた大野先生の笑い声が彼の顔を歪めていく。


「貴方こそ人の妻との逢瀬など『先生』と呼ばれる人間の所業ではありませんよ」

「もう僕は先生じゃない」

「……」

「それに不義だ逢瀬だと貴方に言える資格など無いと思いますけど?」


私の言えなかったことを、


「貴方は本当に桜井さんを妻と認めているのですか?」


先生は奏さんにぶつけていく。

私もその答えが欲しくて奏さんを見つめたのに、


「……彼女はもう桜井ではありませんよ」

「僕にとっては桜井さんのままです」


話は逸れてしまって。


「こんな話し合いは不毛です。千紗さん、行きますよ」

「……」


私に差し出される奏さんの手。

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