重なる身体と歪んだ恋情
父様がそう言ったから、笑顔を作るように努力してた。

そうしていればいつか本当に心から笑える日が来るからって。

きっと周りの人も幸せにするはずだからって。

そしてその言葉を、私は彼に言ったはず。

やっぱり――、


「先生は先生になる前にも舞踏会にいらしたことが?」

「えっ?」


あまりに唐突過ぎる質問だと自分でも分かっているけど、


「そのとき女の子と踊りませんでしたか? まだ10歳くらいの!」


止められなかった。

先生のタキシードを掴んで間近で見上げる。

彼はこんな顔だったかしら? 全然思い出せない。

けれど先生のように優しい口調だったのは覚えてる。

それに彼が大野先生だったら全部納得だわ。

この間のダンスだって、今の台詞だって、

私のこの気持ちだって――。


先生はきょとんと私の顔を見て、そのまま私の後ろに視線が動いた。


「なにを、してらっしゃるんです?」


その声に、私の心臓は凍りついた。

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