重なる身体と歪んだ恋情
あの日を境に、奏さんは家に帰るのが早くなった。

私への贖罪のつもりなのか、他に理由があるのかは分からない。

そして時間が合えば食事をするのも一緒で。

けれど今日は日曜日だというのに家には居なかったり。

それでもこうして夕食の席にはいたりする。

そして唐突に、


「お祖母様が心配してましたよ」

「えっ?」


彼はお祖母様の話をした。


「近い内に行かれては?」

「……行かれたのですか?」


質問を質問で返す私に奏さんはあっさりと「はい」と答える。


「暑さに少し体調を崩していると言っておきました」

「……」


ありのままを言うわけにもいかないだろう。


「余計なことをしてしまいましたか?」


そしてその嘘は私にとってもありがたいものだから、


「いえ、ありがとうございます」


と小さくお礼を口にした。

それでも彼との関係はぎこちないままで。

なんて、私は何を期待しているのだろう?

自分が分からない。

あれだけ行っていた舞踏会や晩餐会に足を運ぶことなく私はこの屋敷に閉じこもったまま。

嫌なら逃げ出せばいいのにそれすら出来ない。

多分、それはお祖母様の為とかではない気がして。


「先生……」


先生はどうしているのかしら?

少しは私の心配をしてくれてる?

なんて都合のいい想像をしては、


「馬鹿みたい」



窓の外の月を見上げた。
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