重なる身体と歪んだ恋情
「あら、如月様ったら千紗様のお水をすっかり忘れてますね」


小雪のセリフに「本当ね」と相づちをして、二人で笑いあう。

上手く笑えてる自信は無いけれど、小雪が柔らかい笑みを見せてくれるから大丈夫。


「それでは私が入れて参りますね」

「えぇ、お願い」


私の髪を結い終えると小雪は部屋から出て行って。

小さく息を吐く。

無理やり笑うのも結構疲れる。

だから報いに幸せがやってくるのかもしれない。

そう考えて、鏡の自分に向かって作り笑いをしてみる。

変な顔。

こんな顔、お祖母様には見せられないわ。もっと自然な笑顔にしなきゃ。

なんて鏡に向かって馬鹿なことをしているとーー。


「きゃあ!!」


小雪の悲鳴が聞こえてきた。そして、


「うわぁ! 火事だ!!」


他の使用人の声も、更にガシャンとガラスの割れる音が響いた。

すぐさま部屋を飛び出して下を見れば、


「千紗様、早くお逃げください! 火事です!!」


階段を上ろうとする小雪の後ろから迫る炎。


「わっ、分かったわ」


降りようとして、


「あ――」


思い出したのはお祖母様のペンダント。

あれは明日返すはずで、他のどんなものが燃えてしまってもあれだけはそんなことになってはいけない気がして。


「千紗様!?」

「大丈夫! すぐに降りるから!!」


だって火元は多分厨房。

すぐにペンダントを手にして戻れば十分逃げれるはず。

そう思ったのに。

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