重なる身体と歪んだ恋情
「こちらです」

「……」


案内されたのは私の部屋からほんの少し離れた個室で。

如月を見上げると、


「ここしか開いてなかったのです。他意などありませんよ」


私の心を読み取ったのか、そんな答えをくれた。

一度小さく深呼吸して、


「奏さん?」


ドアをノックした。すると、


「どうぞ」


すぐに彼の声が。

そっと開けると彼は上体を起こしてこちらを見ていて。


「千紗さん、もう歩かれて大丈夫なのですか?」


笑顔の上には大きなガーゼ、そして右手にも。


「あ……」

「私は大丈夫ですよ、如月が入院しろとうるさいからここにいるだけで」

「何を言ってるんですか。足も骨折されているんですよ?」

「大袈裟だな。先生はひびだとおしゃった気がするが」

「大差ありません」

「違うだろう?」


そんな二人の会話に思わず頬が緩んでしまって。


「どっちでも大事です」


私がそう言うと奏さんと如月は顔を見合わせて、笑った。

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