重なる身体と歪んだ恋情
だとしても。

そうさせたのは私かもしれない。


「千紗、君は席を外して。構いませんよね?」


奏さんの声にハッとして、憲兵の方も「えぇ、お大事に」と口にしたのだけど、


「いえ、大丈夫です。お話を聞かせてください」


そう言うと憲兵の方は目を合わせて、「いいでしょう」と話を続けた。

奏さんが隣で嫌そうに顔を歪めていたけれど、私には知る権利があるとおもうから。


「大野が言うには桐生さんに仕事の邪魔をされたと」

「邪魔だなんて。自分の会社を通そうとすることは普通ではありませんか?」


大野先生の会社は海運業だと聞いた。

憲兵の話から先生は国内の仕事だけだった大野海運の仕事を国外にも広げようとしていたらしい。

そうなると奏さんの会社の競合となるわけで。

もう海外に地盤のある奏さんは大野海運の芽を摘んだ、と言うことらしい。

海外の仕事を見越して金を借り倉庫を建てて人を雇って。

それが全部水の泡になって。

その恨みを晴らすために火をつけた、と言うのが先生の言い分で。


「それでは逆恨みだと?」

「資本主義の国では良くあることです。良くあることですが、その度に家に火をつけられてはたまったものではない」


そう吐き捨てる奏さんに憲兵は顔を見合わせて、


「それでは今日はこれで。また何かありましたらご協力を」

「えぇ、勿論」


奏さんの声に帰って行った。
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