重なる身体と歪んだ恋情

「離せ、早く行かないとーー」


彼女は死んでしまう。


「私が行きます。小雪、中の状況を教えてくれ」


冷静な司の声に小雪は頷いて。


「火は厨房からだったんです。だから千紗様に急いで逃げるように伝えて。なのに千紗様は何かを取りに戻って、待っている間にガラスが割れて踊り場にも火が……」


踊り場にいきなり火が? 放火なのか?

火炎瓶か何かを放り込んだのか?

そうなると2階に上がるのは難しいかもしれない――。


「分かった。私がなんとか2階に行こう。幸い千紗様のお部屋から火は見えない。そこから千紗様を下ろすから奏が」

「私が彼女を迎えに行こう」

「奏、何を馬鹿なことをっ」


私を奏と呼ぶ司。

冷静を装っていても焦っているのが分かる。

けれど、


「放火だとすればこれは私のせいだ」


この火事は私が引き起こしたのだろう。

誰かに恨まれてる覚えはありすぎて数えられないほど。


「いや、しかしっ」

「頼んだよ、司」


私はそう伝えて近くにある水やり用の水を頭から被って燃え盛る屋敷に走った。

ここは私が行くべきだ。なぜなら、


「奏っ!」


司が居れば大丈夫だから。

この家にとっても仕事にしたって、

彼女にとっても――。


まだ火の回っていない玄関を抜けてホールに。


「千紗さんっ!」


ホールにはまだ火はない。駆け抜けて階段へ向かった。

踊り場は小雪の言うとおり炎に包まれていて。


「千紗っ!」


2階を見上げると座り込んでる彼女が見えた。
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