重なる身体と歪んだ恋情

「その本、まだ桜井家に?」

「あ、はい。多分、私は持って来ませんでしたので」


頼りない返事だが探してみる価値はあるかもしれない。

馬鹿な子孫に見つかる前に。


「それ、今すぐ探してみましょう」


そんな私の声に千紗は「え? あ、奏さん!?」と目を白黒させていた。

その後すぐに如月が戻ってきて、手続きが終わったことを告げた。

だからすぐさま車を回すよう指示をして。


「桜井家、ですか? どうしてまた突然?」


訝しそうに聞く如月にもとりあえず今までの顛末を車の中で説明した。


「そこに何があるとお考えで?」


如月は流石に鋭い。

多分私の考えには気づいているのだろう。


「断言は出来ません。ですが以前肩代わりしたとき余りにもおかしいと感じたので」


もしもあの馬鹿息子が全てを金にしてしまったのなら納得だがそれが出来るだけの頭を持っているとは思えない。

ならば――。
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