重なる身体と歪んだ恋情
桜井家に着くとそこには、
「スズ! 今日も来てくれていたのね!」
桜井家の使用人スズが。
勿論、私は面識がないが千紗は懐かしそうに彼女の名前を呼んで、
「ま、まぁ! 千紗様!! 本当にご無沙汰してしまって」
「いいのよ、あなたが今でもこの家を気にかけてくれてるって聞いて――」
「取りあえず、中に入っても?」
残念だが時間がない。
すでに抵当に入っている桜井家の邸宅。
期日は知らないがそんなに時間も無いだろう。
だから千紗を急かすと、
「あ、そうでしたわね。お祖父様の書斎はこちらです」
そう言ってなれた手つきで玄関のドアをあけた。
私の家とは違い純日本邸宅。
大きな土間があって正面には木彫りの鷲を施した衝立が目を奪う。
「どうぞ、おあがりになって」
勧められるまま家の中へ。
「――つっ」
「大丈夫ですか?」
「えぇ、大丈夫です」
それにしても、日本家屋と言うのはどうしてこうも無駄に段差があるのか。
如月の声にそう答えて不自由な足を引きずり、振り向く彼女に笑みを見せて先を急ぐ。