重なる身体と歪んだ恋情

「どうなさいますか?」

「……」


どうするべきか。

彼の回復を待つ、と言うのが正攻法なのだろう。

だが、時間がない。

いっそ、死んでいてくれたらよかったものを。

しかし生きているものをさすがに殺すことも出来ない。

さて……。

なんて。

こんな悩んでいる時間だって惜しいというのに。だから。


「どうあっても捺印していただこうか」

「奏様?」

「彼の筆跡であればいいのだ。方法なんてどうでもいい。いざとなったら精神錯乱とでもんなんでも理由をつけてしまえばいい。とにかく妹である千紗になり祖母になり全財産を譲るという書類を作成してください」

「よろしいので?」


司のいいたいことは分かる。

そういう状況になれば千紗に黙っておくことは出来ない。


「仕方ない。彼女も桜井家がかかっているんです。承諾してくれるでしょう」


彼が生きて居ることを、アヘン中毒であることを彼女に告げなくてはいけなくなる。


「ありのままを話してよろしいので?」


確認するような司の台詞。

伏せることが出来るなら、伏せるべきなのか。

彼女にしてみればたった一人の兄だ。


「――普通に、病気だと言えばいい。流行り病で会うことは叶わないと」


すべてを告げる必要はないのかもしれない。

彼女が会いたい、と言えば話は別だが……。



「奏様の仰せの通りに。それではそのようにこちらも振舞いますので」


軽く頭を下げる司に私は「あぁ」とだけ答えた。

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