重なる身体と歪んだ恋情
司に付き添われて3階まで上り部屋の前。


「それでは私はこれで」


司は頭を下げるとわたしが部屋に入る前に背を向け階段を下りて行った。

薄情な男だ。

どうせなら司がこのドアを開いてくれればいいものを。

小さく息を吐いて自分の部屋だというのにノックする。

すると、


「ど、どうぞ!」


緊張気味の千紗の声が聞こえてきた。

開けると千紗は部屋の真ん中に立ち尽くしていて、真っ直ぐに私を見る。

そんなに警戒しなくても……。

思わず零れたのは自嘲気味な笑み。


「この部屋では寛げませんか?」

「え?」

「それでしたら別の部屋を用意させますが」

「あ、いえ、そういうことは……」

「では私が別の部屋を取りましょうか?」


私の言葉の意味が分かったのか、千紗の顔がこわばったのが分かった。

この部屋で寛げないのではない。

私が同じ空間にいるから――。
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