重なる身体と歪んだ恋情
別に前の生活に戻るだけ。

気にすることなんてなにもない。


「千紗……」


こうして彼と夜を共にすることも無くなるのだろう。

彼にとっては仮の住まい。

私にとっては――。


「もっと……、私を――」


愛して。

身体だけでもいい。

今だけでいい。

この瞬間だけでいいから、


「愛して――」


小さく囁くような声に、彼は目を細めて、


「愛してますよ、千紗」


そう言って口付けをする。

まるで義務のように。

火傷を負った手が、私の肌をざらりと撫でる。

そのたびに私は声を上げ彼の身体を求めた。


きっと、こんな夜もあと少し。
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