重なる身体と歪んだ恋情
乗り場は既に人で溢れて彼の言うように座ることなんで出来ないと思う。
でも、たった1時間ですもの。
「あ」
遠くから低く呻くような音が。
黒い車体から吐き出されるふわふわとした煙。
幼い頃、父の肩から見た姿と同じ機関車が乗り込んできた。
止まると同時に、
「きゃあ!」
「千紗様!」
なだれ込むように車内へ駆け込む人たち。
その流れに逆らえなくて押されるように私も如月も車内に乗り込んだ。
今はまだ春。
日陰に居ると少し肌寒く感じるくらいの季節なのに。
「……暑」
こうもぎゅうぎゅうに詰め込まれては窓から入る風も届かない。
しかも車体が揺れるたびに、知らない人の身体が押し付けられて、
「――っ」
気分が悪い。
「千紗様、少し奥へ動けますか?」
小さく耳打ちしたのは勿論如月で。
フルフルと首を振ると、
「失礼します」
そう言って私の肩を抱き寄せるようにして、人の少ない奥のほうへ連れて行ってくれた。