重なる身体と歪んだ恋情

「こちらで少々お待ちを」


私を一人待合室に残していなくなる如月。

切符を買いに行ったのだろう。

それにしても人が多い。

これだけの人が列車に乗って一体どこに行くのかしら?

電車も乗り合いバスも、タクシーすらここには止まるのだからこれだけの人が動いてもおかしくは無いのだろうけど……。

程なくすると如月は少し早足で私のところへ。

その顔は渋くて。


「申し訳ありません。もう1等客室は売り切れでして」

「そう」


別に1等でなくたって構わない。のに、


「ですからタクシーになさいませんか?」

「どうして?」


素直にそう聞くと如月はさらに顔を渋く歪ませた。


「3等客室の切符しか残っていませんでした。ですが、あまりに人が多く座ることも難しいかと」


なんだ、そんなこと。


「平気よ。横浜まで1時間でしょう? その時間くらい立っていられるわ」

「いえ、そう言ったことではなく……」


歯切れの悪い如月の声。

いいと言ってるのに。


「いいから行きましょう」

「千紗様!?」


動こうとしない如月を置いて待合室の外に。


「乗り場はどこなの? 如月」

「ですから列車は諦めて」


まだそう口にする如月は無視して掲示板に向かって歩き出す。

列車に乗るのは初めてじゃない。

どうすれば乗れるか、どこに時間と場所が書いてあるかくらい私だって知ってるのよ?

だからドンドン歩いて。


「分かりました。千紗様、こちらです」


呆れるような如月の声に私はようやく止まって彼に振り返った。
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