重なる身体と歪んだ恋情
「そうではなくて!」
これでは物がほしくて駄々を捏ねてる子供そのものだわ。
「桜井の家にある私の本棚をそのまま運んで貰えたら――」
それでいいのに。
「千紗様」
彼の声に私の言葉は遮られる。
「ご遠慮など不要です。本もほしいものがありましたらなんなりとお言いつけください。すぐに取り寄せますので」
そうじゃない。
新しいものが欲しいのではなくて――。
「お昼、どうなさいますか?」
そう言われて、もう何も言うことは出来なくなってしまった。
何を言ってもただのわがままにしか思えなくて。
「この近くに奏様がよく行かれているレストランがありますのでそちらで構いませんか?」
そんな如月の声に「……えぇ」と短く答えた。
連れて行かれたのはホテルの中にあるレストランで。
「こちらはビーフシチューが人気のお店で」
如月の説明に「それでいいわ」と小さく伝えた。
注文してくれるのは勿論如月。だけど、
「それではビーフシチューとパンのセットをひとつ。食後は紅茶でよろしいですか?」
そう聞いてくる如月に思わず「えっ?」と聞き返してしまった。