重なる身体と歪んだ恋情
「コーヒーはあまりお好きでは無いのかと勝手に思いまして。コーヒーがよろしければそちらにいたしますが」
私は誰にも『コーヒーが嫌い』なんて言って無い。
だけど、確かにあの苦味には慣れなくていつも無理して飲んでて……。
「紅茶が、いいわ」
小さな声でそう言うと「かしこまりました」と答えてくれた。
誰も私の事なんて興味ないと思ってたのに。
だったら――。
「それでは以上で」
「如月」
私の声にちゃんと「はい」と答えてくれる如月。
「あなたも一緒に食べて?」
だから少しだけ、素直になってみようと思ったの。
「千紗様、使用人と一緒に食事など」
如月はそう言って軽く首を振る。
えぇ、断ると分かっていたわ。でも、
「一人で食べるご飯がどんなに味気ないか知ってる?」
しかもあの家では使用人に見られながらの食事。
どんなに美味しい食事だって美味しさは半減。ううん、それどころか味なんて欠片も感じない。
それでもあの家に居たら仕方ないのだと諦めてる。
だけどここは桐生家ではなくて、周りに知ってる人は誰もいなくて。
だから、
「お願いだから、そこに座って」
そう言うと如月は少し考えて、
「かしこまりました」
私の声にそう答えてくれた。