重なる身体と歪んだ恋情
テーブルには二人分の料理が運ばれる。


「如月は桐生家に来て長いの?」

「8年になります」


お喋りをしながらこうして誰かとご飯を食べるなんて久しぶり。


「それなら私が来る前は奏さんについていたの?」

「はい。前は会社のほうでお手伝いさせていただいてました」

「仕事って?」


私の声に如月は少し困ったように笑って、


「色々です」


と答えた。

ちょっと質問ばかりしすぎたかしら?

でも、知りたいんだもの。


「如月は、結婚しているの?」

「いえ、そのような相手は居ませんから」


その答えにはちょっとだけホッとした。

だってこうして私と食べることをとがめる人は居ないから。


「このパン、美味しいわ」


パンだけじゃない。

このビーフシチューもサラダもなにもかも美味しい。

それはこの料理だけの問題じゃなくて、


「でしたら買って帰りましょうか」

「え?」

「明日の朝食にいかがですか?」


ほんの少し、目を細めて笑ってくれる人がいるから。


「そうね。そうして、如月」

「かしこまりました」


だからそっとハンカチで口元を拭う彼に微笑んでみせた。
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