重なる身体と歪んだ恋情
食後に運ばれる紅茶は最高に美味しい。
飲み終わるのが惜しいくらいに。
だって、これが終わったらあの家に帰らないと――。
「この後、大丈夫ですか?」
「えっ?」
私と同じ紅茶を口に運んで、カップをカチャリとソーサーの上に。
如月のマナーは完璧でその仕草も優雅だ。
こうして向かい合って座る私たちが、主と使用人だなんて誰も思わないだろう。
「奏様からドレスを新調するようにと仰せつかっております。ついでといっては申し訳ありませんが、店が近くにあるもので」
まだ外に居れる。
それが嬉しくて、
「えぇ、大丈夫よ。行きましょう」
思わず笑顔でそう答えてしまった。