重なる身体と歪んだ恋情
けれどセンスと言うものは性格に比例しないらしい。
飾られてるドレスはとても素晴らしく、斬新的なものが多い。
ひらひらと広がったものだけではなく体の線がくっきりと浮き出るものだったり、コルセットの不要なドレスだったり。
「……」
「そちら、お気に召しまして?」
「いえ、違うわ」
思い出したのはあの黒いドレスで。
もしかしたらあのドレスは彼女に買ってきたものかもしれない。
なんて考えが頭の中をよぎった。
「奥様はお肌が白いですからこのベージュはどうでしょう? 光沢もあってそのお肌にとてもよく映えると思いますよ?」
見せられたのはキラキラと反射するシルクベージュの生地。
着物のよしあしなら分かってもドレスの生地までは分からない。
だから、そっと隣を見上げれば、
「上品な光沢があってよろしかと」
如月がそう言ってくれるから、
「なら、これでお願い」
この生地でドレスを作ることにした。