重なる身体と歪んだ恋情

それ以外に、桜色の生地と深い深紅のドレスに光沢のある黒。


「では採寸しますのでこちらへ」


彼女に呼ばれお店の奥へ。


「服はそのままで構いませんので」


八重さんはそう言うと私の身体にメジャーを当てて採寸。


「どういった形のドレスがよろしいですか?」


そんなことを言われてもさっぱり頭に浮かばない。

普段着のドレスならそれなりに流行りと言うものも分かるけど、この生地はどう見てもパーティードレスだ。

最近は社交界にも全く顔を出していないから、どういったものが流行りかなんて……。


「コルセットの時代は終わりました。これからは女性も自由に着飾る自体。奥様の思うままを言ってくださって構いませんわ」


私の考えを見透かしたような台詞。

だったら、


「楽なドレスがいいわ。動きやすくて一人で脱ぎ着出来るもの。でも、下品なものは嫌。娼婦では無いのだから」


そう言うと八重さんはクスリと笑って、


「かしこまりました。ではそれに叶った見本を何着かご用意いたしますね」


メジャーをくるくると巻いてお店のさらに奥へ消えて行った。
< 65 / 396 >

この作品をシェア

pagetop