重なる身体と歪んだ恋情
それ以外に、桜色の生地と深い深紅のドレスに光沢のある黒。
「では採寸しますのでこちらへ」
彼女に呼ばれお店の奥へ。
「服はそのままで構いませんので」
八重さんはそう言うと私の身体にメジャーを当てて採寸。
「どういった形のドレスがよろしいですか?」
そんなことを言われてもさっぱり頭に浮かばない。
普段着のドレスならそれなりに流行りと言うものも分かるけど、この生地はどう見てもパーティードレスだ。
最近は社交界にも全く顔を出していないから、どういったものが流行りかなんて……。
「コルセットの時代は終わりました。これからは女性も自由に着飾る自体。奥様の思うままを言ってくださって構いませんわ」
私の考えを見透かしたような台詞。
だったら、
「楽なドレスがいいわ。動きやすくて一人で脱ぎ着出来るもの。でも、下品なものは嫌。娼婦では無いのだから」
そう言うと八重さんはクスリと笑って、
「かしこまりました。ではそれに叶った見本を何着かご用意いたしますね」
メジャーをくるくると巻いてお店のさらに奥へ消えて行った。