重なる身体と歪んだ恋情
「兄さん!」
その声に振り向けば一人の青年が。
「郁、ここではその呼び方は止めなさいとなんと言えば」
「兄さん?」
繰り返す私の声に、郁と呼ばれた青年は「あ」と声を上げて私に頭を下げた。
「申し訳ありません。私の弟で郁といいます。この温室を奏様から預かり育てているものです」
「弟……」
「はい、如月郁です。千紗様、ですよね?」
「郁、なんですか? その口の利き方は」
如月の声にビクッと体を震わせて、「申し訳ありませんっ」と慌てて頭を下げる郁。
言われて見れば如月に似てるかも……?
例えば背の高いところや細面の顔とか。
「えと、如月郁です。よろしくお願いします」
けれどそう言ってニコリと笑う郁は如月とは違って人懐こい笑顔を見せた。