重なる身体と歪んだ恋情

「今日は奏様が早く帰られるそうです」

「えっ?」


思いがけない如月の声に思わず驚きの声が漏れた。


「ですので夕食はご一緒に取ることが出来るかと」

「……そう」


彼と、夕食で顔を合わせるのはどれくらい振りなんだろう?

私たちは夫婦で彼の居ないことを寂しがって、居る事を喜ばないといけないのに。


「はぁ」


思わずため息が零れてしまう。

朝はそれでも顔を合わせることもあるけれど時間がないから挨拶を交わす程度。

もしくは私が下に降りたときには居なかったり。

そんな毎日だったのに。

気が重い。

彼と顔を合わせるのが、同じ空間に居るのが。

一体何を話せばいいのかしら?

とりあえず、


「……」


部屋に飾られた鏡台に本棚、それに時計のお礼は言わないと。

それとクローゼットに掛けられた沢山のドレスのお礼も。

あとは、


何を話せばいい?


なんて、誰にも相談なんて出来るわけも無く私はもう一度ため息を付いた。
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