図書室で、恋。
そんなことを聞く私に驚いたのか、大和くんは少しびっくりした様子をしたものの、すぐに優しく笑った。
「そうですね…昔の時代では一夫多妻制なようなものですから。
女性は愛しい男性が訪れてくるのを、ひたすら待ち続けます。」
「ふーん…」
「あ、ただ岩崎さんとは違って、もっとおしとやかでしなやかな大人の女性、ですかね。」
「へ、ちょっ、それってどういう意味?!」
私はその場で大和くんを軽く睨むも、大和くんはいつものようにクスリと笑うだけだった。
そんな大和くんに私はため息をつくだけだった。
あーあ、もう変なこと聞くんじゃなかった。
それでも、もしかして大和くんが古典の先生だったら少しは苦手が克服できるかな、なんてことを少しだけ思った。
ピーーーーーッ……
やがてグラウンドに、いつものように笛が鳴り響く。
「よし!」
私は教科書やノートを鞄に入れ、「じゃ大和くん、またね!」と言って図書室を出た。
足取りはとても軽い。
汗だくの悠太にお疲れ様、と早く言いたかった。
一方で彼は可笑しそうに笑った。
「岩崎陽彩…純粋だな。」
彼がそんな私をまさか図書室から眺めていただなんて…
この時は思ってもみなかった。