図書室で、恋。


悠太にとって私はただの幼なじみ。

私がどんなに悠太のことを想おうとも、どんなに尽くそうともそれは悠太にはきっと届かない。


「好き、ですね。」

「えっ…!?」

ふと気が付くと、大和くんは片手に本をそのまま持ちながら私の真後ろに立って、一緒になってグラウンドを見つめていた。

「や、大和くん…?」

その場から身動きがとれないほどの距離。

大和くん…近い。


「こうやって毎日毎日…岩崎さんはグラウンドを見つめていて。儚い思いですね。」

「……。」

そんな私の気持ちとは裏腹に大和くんは遠い目をしていた。

夕日が眩しいのか、そっと目を細める。

「まるで昔の――平安時代の女君のようです。
愛しい人を来る日も来る日も思っていて…って、古典が苦手な岩崎さんには分からないかな?」

クスリと笑い、黒縁の眼鏡をかけなおす大和くん。

一連の動作と表情は、あまりにも綺麗だと思ってしまった。

大和くん、そんな表情もするんだね。


ぼーっとそんなことを考えていると、いつの間にか大和くんはその場から離れ、またカウンターの方へと戻っていた。


「昔の人は…」

「はい?」

「昔の人は好きな人を想っている毎日だったの?」

私はそう静かに聞いた。


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