図書室で、恋。
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次の日、なんとなく気分が晴れないまま悠太を迎えに行く。
胸に突っかかった感情は上手く説明できなくて…ため息の連続だった。
「うっす。」
「……え?」
声がしたかと思うと、そこには悠太が自宅の前の塀にもたれかかっていた。
私はその光景を見て、目を見開く。
「え、え、え?なんで?」
「なんでって…学校だからな?」
悠太は困ったように首を傾げ、苦笑いをした。
「いやいや、そうじゃなくて!起きたの?」
「めずらしく目、覚めた。」
「信じられない…大丈夫?熱でもあるんじゃない?」
私は慌てて悠太に駆け寄る。
「失礼な。至って正常!よし、陽彩、行くぞ!」
悠太は自転車にまたがり少し進むと、ふわっと笑い私を後ろへ促した。
「……。」
その瞬間、今の今までモヤモヤしていた塊がスーッと消えていくような気がした。
自転車、乗っていいんだよね?
悠太の後ろに座っていいんだよね?
私はなんだか可笑しくなって、思わず笑みがこぼれた。
「なーに笑ってるんだよ!置いてくぞ?」
「ふふっ…ごめん、何でもない。」
私は嬉しくなって、駆け寄って自転車の後ろに座った。
「おまわりさんと先生に見つかりませんよーに!」
そんなことを言いながら漕ぎ出す悠太の体温を感じながら私は目を閉じた。
全部、私の変な思い過ごしだったんだね。
なんか馬鹿みたい。
そうだよ、大丈夫。何も変わることなんてない。
今までも、これからも―――
私はそんなことを思いながら、そっと悠太の背中に頭を預けた。