図書室で、恋。


「今日はやけにご機嫌ですね。」

「え?」

不意に大和くんが、不思議そうにして私に言った。

「うふふ、分かる?」

分かるも何も、むしろ聞いてくださいアピールをしている私だ。
終始鼻歌をずっと歌っている。

「聞いてほしいのではないかと思いましたので。」

「さすが大和くん!分かってる~!」

私は満面の笑みで答えた。


今日は1日中、にやけ顔が止まらない。

瑠璃にもキモイと言われ続けたくらい。


大嫌いな古典の授業も、1度もあくびが出なかった。

もちろん頭の中は全くよそ事を考えていたけれど…。


幼なじみの悠太。

ほぼ毎日顔を合わせる間柄のやつでも、あんなに嬉しいことがあるだなんて。

やっぱり恋の力はすごい。


私、悠太のこと本当に大好きなんだなぁ~


「幼なじみの彼と、上手くいったのですか?」

「んふふ、まぁ嬉しいことがあってね~」

今、間違いなく私はマヌケ顔だ。多分今日一番だ。


大和くんは分厚い本をパタリと閉じ、「良かったですね。」と言った。


まったくもう、大和くんってば本当になんて言うか、反応薄いっていうか…

ま、大和くんらしいっちゃらしいけどね。


「大和くんはさ、恋してないの?」

「恋…ですか。」


そう言えば、大和くんから恋愛の話なんて聞いたこともない。

……まぁ、当の本人がこんな感じだから、そりゃそうかもな。


そんなことを考えていたら、少し沈黙が出来て大和くんがポツリとつぶやいた。


「自分の気持ちに素直になれる岩崎さんが羨ましいです。」


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