図書室で、恋。



「あっ…もうダメっ…」

「え、何、もうギブ?」

「もうっ…や、まと…っ」


図書室の中からハッキリと聞こえてくるいかがわしい声。

私だってそこそこの年頃の女子である。


今、この中で行われていることくらい…想像はつく。

私が此処にいることなんて知るはずもなく、中の声はいやらしさをどんどん増していった。


女の人の声と、間違いない大和くんの声。

何が起きているのかさっぱり分からず、耳を塞ぎたくなる。


早く立ち去ればいいものの、私はこの間の大和くんと湯川さんを見た時と同じく、催眠術にかかったかのようにその場から動けなくなっていた。


どうしよう、どうしよう、どうしよう……


その時持っていたカバンの中のスマホが小さく振動した。

その振動が、催眠術を解いたのか、ふっと身体が軽くなった。


逃げなきゃ…!


とっさにそう思い、踵を返そうとした時だった。



ガッシャーーーンッ――――……


静かな廊下に、大きな音が響き渡った。


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