図書室で、恋。



壁に立てかけてあったほうきが、私の鞄に当たり、そのまま倒れたのであった。

その大きな音に私は再び足がすくんでまった。

そしてぴたりと止んだ図書室からの声。


早く、早く此処から立ち去らなきゃ…。

そう思えば思うほど、焦り、身動きが全く取れなかった。


たかが数秒のことが、何時間にも長く感じた。


やがて、中から足音がこっちに近づいてくるのが分かった。


私は怖くなってギュッと目をつむった。




ガラララッ…


ドアが勢いよく開く音がして、「岩崎…」という声がしばらくして聞こえた。

私はその後恐る恐る目を開いた。


「あ…あの…」

私はこの数秒の間で必死に言い訳を考えていた。



立ち聞きしようとしたつもりなんて、これっぽっちもないんだよ。

そりゃ大和くんも男だもんね。うん、しょうがない、人間だもの。

大丈夫、何も見てないから。




ゆっくりと大和くんと目が合う。

汗ばんだ大和くんは髪をかき上げ、呆れたかのように私を見ていた。


その様子は、今までで見たこともない大和くんだった。



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