学園怪談2 ~10年後の再会~
しかし、女性は特に気にするでもなく頭を下げると言った。
「私、ちょっと調べていただきたい物がありまして、お伺いしたんですけど」
 客だ! 初日からいきなり仕事だ! やったぜ、小松事務所大フィーバー! ばんざーい、ばんざーい。
「あ、あの、何をバンザイしてらっしゃるんですか?」
「え、あ、いや何でもないです! ささ、どうぞ中へ」
 イカンイカン、つい浮かれて僕は無言でバンザイをしていたらしい。これじゃあ何処から見ても怪しい男だ。
「はい、お邪魔します」
 僕は客を窓際の事務所に一つしかない応接席に通した。そしてお茶を二人分淹れると、彼女の前のソファに腰をかけた。
「始めまして、小松と申します」
「あ、始めまして蔵垣と申します。あの……それで、先生は?」
「は?」
 彼女の質問に大きく間抜けな表情を返した僕は、数秒のあいだ女性と見つめあっていたが、やがて女性から恐る恐る言葉が発せられた。
「あ、あのもしかして小松先生って……」
「ん? ここの所員は私だけですけど」
 途端に女性は顔を真っ赤にして頭を下げた。
「もも、申し訳ありません。しし、失礼しました! あ、あの私てっきりお手伝いの所員の方だとばかり」
 ……あ、はは、そういう事か。僕はやっと事態が飲み込めた。
「いや、まあ。大丈夫ですよ。こんな頼りなく見えても仕事はしっかりとやりますから」
 そりゃーね、こんな髪の毛ボサボサで、季節関係なく半そで、短パン、素足。どこからどう見てもただの田舎っぺの小学生だよ。仕方ないじゃん。そういう体質なんだから、でもこの格好が一番自然に見えるからいいんだよーだ。
「ほ、本当に失礼しました。でも先生ならきっと事件を解決してくれると信じています。どうか助けて下さい」
 女性は何度も頭を下げる。
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