学園怪談2 ~10年後の再会~
「……」
「……あ、あの?」
 無言で見つめる僕の顔を恐る恐るといった感じで見上げてくる。
「あなたは教師ですね、おそらくは社会かな。今日は校舎に寄って、それからここに来たってところですか?」
 僕の言葉に、女性は目を丸くする。
「え、ど、どうして分かるんですか? 私はまだ何も……」
 信じられないと言った表情の彼女に、僕は言った。
「いえ、半分くらいはあてずっぽうですが、スーツのスカートの部分にチョークの粉汚れっぽい跡があります」
「え、あっ! 本当だ」
 僕は続ける。
「それに、右手3本だけ、指先がかなり荒れている。これは何かペン意外の物を長時間使う仕事の人かなってね」
 蔵垣さんは今度は指を見つめた。少しずつ彼女の僕を見る目に驚き以外の感情が帯び始めた。
「あと、今日は土曜日。一般企業なら休みの日なのにスーツを着ているし、さっき僕が名詞を渡したときにお返しの名詞が出てこなかったから、名詞を持ってないか、普段は使わない仕事をしてる人かなってね、それから、荷物の中から少し見え隠れするのが何かの地図のように見えたから」
 もう彼女の僕を見る目から頼りない表情は消えていた。
「す、すごい。おみそれしました。これなら安心して任せられます。お願いです、先生、私の話を聞いてください」
 蔵垣さんは地図の入った紙袋の底から一本のDVDを取り出した。
「はいはい聞きましょう。何でもはなして下さい」
 僕もいつからか偉そうに普段のペースを取り戻していた。
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