学園怪談2 ~10年後の再会~
「ミクは未練を残しているんですよね! 未練を残したまま死んでしまったら……ミクは、ミクはいったいどうなってしまうんですか?」
その問いかけに、死神は眼を伏せつつ、申し訳なさそうに答えた。
「……残念ですが、天国へは行けません。しかし彼女は幼くして死んだので罪もない。地獄へは行かずに、三途の河で待機していただくかたちになります」
昔から聞きなれた言葉なのに、絶対に自分に関係のない言葉。それが今、自分の娘に降りかかろうとしていた。
「では失礼します」
そして、呆然とする二人を残して礼儀正しく挨拶をすると、死神は去って行った。
「うわああああ!」
ドアが閉まると同時に突っ伏して号泣するママ。ミクと続けた家族としての暮らしがタイムリミットを迎えるという現実。また、その後のミクの行く先を知らされ、それが不憫でたまらなかった。
「なんで、なんでこの子なの? 私が、私が死ねばよかったのに」
涙は止まらない。後悔と憎悪が入り混じり、複雑な想いに胸が張り裂けそうに痛む。
「ミク! ミク! 聞こえるか! 聞いてくれ!」
「……」
パパは大声でミクの名前を呼び、肩を掴んで正面を向かせる。
その瞬間に、ミクの肩や顔の一部が僅かに消失した。もう長く現世に留まれないミクの肉体が、消え始めていることがわかった。
「いったい何が未練なんだ? 何か不満があったのか? 教えてくれ! このままじゃ、お前は死んでも死にきれないんだ。とても、とても耐えられない。頼む……頼むから」
パパも涙を流した。
しかし、体が徐々に消えつつもミクは何も喋ることはなく、白目のままジッとパパを見つめていた。
「くそっ!」
パパはどうすることもできない歯がゆさに耐えかね、台所からウイスキーのボトルを持ち出すと、グラスに注いでストレートで1杯飲みほした。
「パパ……」
ママはミクを抱き抱え、涙を流し続けた。その涙がミクの消えた体の部分に流れても、ミクの体は何も変化せず、少しずつ確実に消失し続ける。
「こんな、こんな晩酌は初めてだ。人生で一番マズイ酒だ、くそっ!」
悪態をついたパパの言葉に、初めてミクが大きな反応を示した。
「ば……んしゃ……く」
今までに何も喋らなかったミクが、初めて自分から口を開き、自分の意志でパパを見た。
その問いかけに、死神は眼を伏せつつ、申し訳なさそうに答えた。
「……残念ですが、天国へは行けません。しかし彼女は幼くして死んだので罪もない。地獄へは行かずに、三途の河で待機していただくかたちになります」
昔から聞きなれた言葉なのに、絶対に自分に関係のない言葉。それが今、自分の娘に降りかかろうとしていた。
「では失礼します」
そして、呆然とする二人を残して礼儀正しく挨拶をすると、死神は去って行った。
「うわああああ!」
ドアが閉まると同時に突っ伏して号泣するママ。ミクと続けた家族としての暮らしがタイムリミットを迎えるという現実。また、その後のミクの行く先を知らされ、それが不憫でたまらなかった。
「なんで、なんでこの子なの? 私が、私が死ねばよかったのに」
涙は止まらない。後悔と憎悪が入り混じり、複雑な想いに胸が張り裂けそうに痛む。
「ミク! ミク! 聞こえるか! 聞いてくれ!」
「……」
パパは大声でミクの名前を呼び、肩を掴んで正面を向かせる。
その瞬間に、ミクの肩や顔の一部が僅かに消失した。もう長く現世に留まれないミクの肉体が、消え始めていることがわかった。
「いったい何が未練なんだ? 何か不満があったのか? 教えてくれ! このままじゃ、お前は死んでも死にきれないんだ。とても、とても耐えられない。頼む……頼むから」
パパも涙を流した。
しかし、体が徐々に消えつつもミクは何も喋ることはなく、白目のままジッとパパを見つめていた。
「くそっ!」
パパはどうすることもできない歯がゆさに耐えかね、台所からウイスキーのボトルを持ち出すと、グラスに注いでストレートで1杯飲みほした。
「パパ……」
ママはミクを抱き抱え、涙を流し続けた。その涙がミクの消えた体の部分に流れても、ミクの体は何も変化せず、少しずつ確実に消失し続ける。
「こんな、こんな晩酌は初めてだ。人生で一番マズイ酒だ、くそっ!」
悪態をついたパパの言葉に、初めてミクが大きな反応を示した。
「ば……んしゃ……く」
今までに何も喋らなかったミクが、初めて自分から口を開き、自分の意志でパパを見た。