学園怪談2 ~10年後の再会~
第62話 『生霊の恐怖』 語り手 能勢雅亮

 教室へと戻った私たちは、能勢さんの話から怪談を再開する事にした。
「じゃあ能勢さん、よろしくお願いします」
 私の言葉に、能勢さんは重々しく頷いた。
 ……能勢さんは話す前から冷や汗をかいており、次に話す内容の凄まじさを早くも匂わせてくる。
「さて、今回は怪談らしい話を一つするとしようか」
 能勢さんは唇を舐め舐め、話し始めた。
「僕が短大で勉強していた頃の話なんだけど……」

 ……。
 短大生活も早いもので2年生の秋。早々と卒業単位の確保もメドが立ち、そして就職もバイト先の庭師に内定していた僕は呑気な学生生活を送っていた。
「お~い能勢チーン」
 短大の食堂でくつろいでいた僕に声をかけてきたのは、同級生のモリチンという男だった。
「おおモリチンか。どうしたんだい?」
 モリチンはメガネをかけた優男ではあるけど、在学中はアコースティックギターを片手に、いつも駅前で弾き語りをしていてね。ある程度ファンなんかもついて人気もあったんだよ。僕も一緒に駅前で歌ったりして、いや~よかったな~。
 ……おお、失礼。それでね、そのモリチンなんだけど、卒業後は海外に留学が決まっていてね、だからこの当時は就職が決まって暇な二人でしょっちゅうつるんでいたんだ。
 それでね、二人でドライブをした秋の夜長、恐ろしい事件が起きたんだ。
「能勢チン、今日はさ、嘆きの館に行ってみないかい?」
 愛車を走らせていた僕は、助手席に座ったモリチンの何気ない提案を聞いた。
「なんだい、そのゲームに出てきそうな名前は?」
 モリチンは倒し気味にしていた車のシートを元に戻すと、にこやかな笑みで言った。
「へへへ、いいから行ってみようよ。ナビゲートするからさ」
 そして僕達はMDのボリュームを上げて車を走らせた。
< 72 / 296 >

この作品をシェア

pagetop