愛を知る日まで
俺は、真陽の過去も未来も独り占め出来ないんだと思うとどうしょうもなく悔しい気分になってくる。
セックスが終わってもそんな思いが俺を彼女から離させないでいた。
服も着ずひっつき虫のようにくっついて離れない俺の頭を、真陽は困ったように笑いながら撫でていた。
「今は柊くんだけの私だよ。」
その優しい慰めすら切ない。
すっかり一人でいじけてる俺の頭を撫で続けながら、真陽はふいに窓の外を見て言った。
「ね、柊くん。一緒に買い物行こっか?」
「えっ!?」
有り得ない一言に俺が目を剥く。
だって、真陽とは一緒に外を歩いたりしちゃいけないんだ。
一緒の所を絶対誰かに見られちゃいけないから。
だから、俺たちはデートだって出来ないし、手を繋いで散歩する事すら出来ないんだ。
なのに、なのに。
「…い、いいの?」
「買い物って言ってもそこのコンビニまでね。住宅街のコンビニだから知り合いに会うことも無いだろうし、この時間なら人も少なそうだし。」
たかがコンビニ、されどコンビニ。
真陽と一緒に出掛けられるんだ。外を歩いて、買い物が出来るんだ…!!
「行く!!行く!!行こう!早く行こう!!」
嬉しくてガバッと立ち上がった俺に、真陽は赤くなって
「…その前に柊くん、服着て…。」
と言って目を逸らした。