愛を知る日まで
翌日。
バイトを終えた俺は、ぬくもり園の手伝いに行くこともなく部屋で彰を待っていた。
もうすぐ来るだろう彰の言葉に頷けば、俺は真陽を手に入れられる。
胸が痛いほど脈打つ。期待なのか、それともまともじゃない世界へ飛び込む事にビビってるんだろうか。
「ちぇっ、らしくねえ」
そんな自分にイラつきながら、座っていた腰をあげる。
――…これが、正解なんだろうか
ふと、よぎってしまう思いを掻き消すように、俺は部屋の中をうろついた。
「ちっきしょう、彰のヤツおせえんだよ。」
焦れる気持ちを吐き出すように呟いて、俺は外の様子を見ようと窓に向かった。
カーテンを開き窓を開けると、途端に夏の熱気が入り込んで来る。
その不快さに顔を歪める俺の目に、ある物が飛び込んできた。
「…………ぁ、」
暑い暑い、夏の淀んだ空気の中
それは鮮烈に俺の目に映った。
「………実が……」
ベランダのトマトが、実をつけていた。