ALONES
ランベールは告げる。
「早々にロレンツェの王と会談すべきです、陛下。この睨み合いが今後も続き、少しでも悪化しようものなら…エルヴィス様の思うつぼだ。」
事態の悪化に便乗するほど、好都合なものは無い。
だから一刻も早く話をつけ、この睨み合いを終わらせることが…まだ権力を保持していないエルヴィス様の足止めに繋がると、ランベールは踏んだ。
彼の助言は的確だった。
凄いなと、珍しく感心しながらレイチェルは話の結末を待つ。
そして王は―頷いた。
「直、オルフィリアを回らねばならぬと思っていた所だったのだ。ロレンツェの国境付近を訪れた際に、会談を申し込んでみよう。」
「…御意。では、明日にも出発できるよう、手配をして参ります。尚…この事は当日までくれぐれもご内密に。」
念には念をと言わんばかりにランベールは鋭い眼光で王を見据え、それからレイチェルの肩を優しく叩く。
「護衛にはレイチェルと、王国騎士団副団長のキール・ヴァン=ウォーロックを付けましょう。私はこの城で見張り役を。」
ランベールが城に残るとなれば、王も安心して城を離れる事が出来るだろう。
「うむ、任せた。」と王は頷き、「レイチェル、宜しく頼んだぞ。」口元を緩め言った。
ピリリ、と気が引き締まる。
王に仕えて早数年経つが、ランベール抜きで遠征に同行したことは今だかつてない。
――重役だ。しっかりしなければ。
レイチェルは足を揃え、機敏に左手を右胸に当てる。
ランベールが見守る中、息を整え…彼女は一心に、我が主に忠誠を誓った。
「レイチェル・ラ・ヴァルニエ、この命にかけて、陛下をお守り致します。」