ALONES
蝋燭の光に照らされて、その人物はクスリと不敵に微笑んだ。
ウェーブのかかった艶やかなブロンドの髪、それでいて攻撃的なヘーゼルの瞳。
妖艶な体つきには似合わない大ぶりの剣が、腰に携えられている。
第二王子専属騎士にして、妖艶の殺戮者の異名を持つエルヴィス様の僕。
レイチェルは、目の前にいる女――アストリッド・シュナイゼンを睨みつけた。
「…何の用、ですか。」
耐えきれず、威嚇する。
するとアストリッドは唇を尖らせ、無駄に長い睫を伏せる。
「いやぁねぇ、そんな目で見ないで、怖いわぁ。」
そして一歩、また一歩と距離を縮め、その瞳でレイチェルの全てを嘗め回すように側に立ち、
「ねぇ、ちょっと聞きたいことがあるのよぉ。」
唇と唇が触れ合いそうなほど近くに寄れば、逃げられぬように左手を腰に回して、アストリッドは右手でレイチェルの赤髪を弄びながら、赤い口紅で彩られたその口を開いた。
「今日一日可愛らしいあなたの姿を見かけなかったけれど、一体どこに行っていたのかしらー。」
レイチェルは唇を噛んだ。この女、エルヴィス様に仕向けられたか。
冷や汗が背中を伝いそうになるが、必死に心の中で何度もつぶやいて、平常心を奮い立たせる。
屈するな。屈するな。
今、この女に屈してなるものか。