ALONES
「それを貴女に言って…得をするのは一体誰ですか?
先に言っておきますが、何度問われても私は所用としか答えない。それでもいいのなら、どうぞ続けて下さい。」
躰にまとわりつくアストリッドの両の手を振り払いながらレイチェルは告げた。
驚いたように、されど想定内のようにアストリッドは「あら、残念」と呟くと、意味深ににやりと笑った。
そして再び蛇のように迫る。
「てっきり愛しのアルヴァスティン様の所に行っていたのかと思っていたわぁ。そろそろ王も心配し出す頃だものねぇ…。孤島で独り、死んでいないか。」
この、女。
固く閉じた唇の奥で、ぎりっと歯を噛みしめた。
この女、この女、よくも殿下を侮辱したな。
思わず剣の柄に手をかけそうになる心を、必死に止める。
昔からそうだ。こうして内面的な挑発をし、ダメージを与える。
しかも残酷な方法でどんどん相手を追いつめるのが、彼女のやり方だ。
本当に蛇のような女だと、レイチェルは思っている。
だが、それにしても…この女は鋭い。
彼女もまた、5年前の出来事を知る人物故に、想像すれば分かることかもしれないが…。
このタイミングで、ピンポイントで来るとは、流石のレイチェルも不覚だったと後悔する。
それでも。
「用はそれだけですか。では。」
負けるものか。