ALONES

レイチェルはさらりと告げると、彼女を振り返る事無く…階段を下り始めた。


それで終わると思った。


だが、アストリッドはそんな彼女の態度が最高に気に食わなかったのだろう。



「いつからそんな口が聞ける様になったのかしらねぇ…。この、七光り。」



ハッと息を吐くと、レイチェルの後を追い、背を向けたままのその赤髪を強引に引っ張った。

そして驚いた彼女の体が反応する前に、アストリッドは細いレイチェルの首を掴み、衝動に任せて壁に叩きつける。



「ぐ、」



あまりにも強い力と衝撃に、レイチェルは鈍い唸り声を上げた。

力を失った手から燭台が滑り落ち、火が消える。



「調子乗ってんじゃないわよ。国王の専属騎士になれたのも、どうせジークハルト様の名前があったからでしょ。」


恐ろしいほどにヘーゼルの瞳を見開き、七光り、と彼女はレイチェルにしつこく、何度も繰り返した。



「あんたなんか一生地に這いつくばって、わんわん泣いて過ごせばいいのよ、昔みたいにね!」



それはあまりにも幼稚で執拗で、レイチェルすら呆れるほどだった。

しかし、ギリギリと首に食い込む指は、本気で。



くそう。


レイチェルは涙目になりながら、震える手で剣の柄に手を掛けた、そして――。



「、離れろ!」


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