ALONES
「レイチェル。」
とにかく今は彼女を落ち着かせなくては。
ランベールはできるだけ強く彼女の剣を押し返し、力が弱まったその一瞬をついてその剣を弾いた。
白銀の剣は主の手から離れ、軽やかに舞い、カシャンと音を立てて石畳の床に転がる。
「――もう、終わった。」
その一言で、レイチェルの体がピクリと反応を示し、瞳孔が開いたままの瞳がうろたえ始める。
「もう終わったから、目を覚ませ、レイチェル。」
徐々に焦点が合い始めた金色の瞳を、ランベールはただ見つめた。
すると、彼女は「あ、あ、」と声にならない声を上げ、がたがたと震え始める。
「団長、わ、たし、」
またやってしまったと言わんばかりに、彼女は己の両手を眺め、ギュッと目を閉じた。
手袋をしないまま本格的な戦闘をしてしまったせいか、その両掌は皮がめくれ血まみれになり、剣の柄を真っ赤に染め上げていた。
「…わ、た、し、」
恐怖に最も近い表情で、レイチェルはただ茫然と座り込み、パクパクと口だけが動く。
涙も出なければ、声も出ない。
久しぶりに激昂してしまった自分が怖いのだろう。
ランベールは何も言わず、彼女を立たせると…優しい光が灯る礼拝堂に連れて行った。
「おい、誰かいないか。」
声を張り上げそう呼べば奥の扉からいそいそと修道女が現れ…、レイチェルを見るなり「まぁ!」と口に手を添えた。