ALONES
* * *
キーラが泣き止むのを待って、僕は髪を洗う為に浴室へと向かった。
――無駄に広い部屋と同様に広い浴室の浴槽は、長い事使われていないせいか、かなり酷い有様であった。
かつては王族がここで余暇を過ごし、大勢の使用人が大量の湯を沸かしては主の為に注いでいたのだろうが…、今やここに住む者は僕一人。
しかも掃除をする事すらままならないとなれば、こうなる事も明らかだろう。
折角の壁面の芸術的な絵も、今や切ないほどくすんでいる。
まるで…今の僕の心を映し出しているかのように、くすんでいる。
僕は扉付近に湯の入った甕を置いて、どうしようもなく座り込んだ。
早く髪を洗わないと。
でも、そんな事さえできないくらいに手は震え、心は凍りそうだった。
動けない。
もうどうしていいか分からなくて…ただ、後悔と哀しみが押し寄せる。
何故、聞いてしまったんだろう。
そんなこと…僕が一番よく分かっているのに。