ALONES
『貴方の病は殆ど前例が無く、我々にも解明できない複雑な病です。
――残念ながら、現在、治療法は見つかっていません。』
5年前…イゼリオ公国の医師は僕にそう告げた。
それはこの先一生治らないと言われているも同然だった。
奇跡が起きればいいのに。
大丈夫だと繕った笑顔の奥底で、知らず知らずありえない何かに縋り付いていたのだろう。
だから、奇跡のような彼女と出会った時、不思議な力を知った時、気が付かない内に僕は期待していた。
キーラなら、この病を治せるのではないか、と。
馬鹿だ。
結局、僕の変な期待が…彼女を泣かせてしまった。
甕から救い上げた生暖かい湯が、僕の指の間から流れ落ち…床の溝に消えていく。
いくら表面上の汚れは落とせても、罪悪感までは洗い流せない。
彼女の泣き顔を思い出す度に、心臓が悲鳴を上げる。
そして小さな湯煙が消えた時、
僕は、一つの考えに至った。