ALONES
はらりと、瞳から雫が零れ――抱えた甕の中へと落ちる、それは一瞬の出来事で。
バン、という大きな音。
浴室とは違う、空気の匂い。
振り返り、息を飲んだ直後。
抱えていた甕がふわりと宙に浮き、傾いたかと思った刹那、甕の中の湯がなんの躊躇いも無く全身に降り注いだ。
「、!」
物凄い水圧に負けて、僕は座ったままの状態から床に這うようにして倒れ込む。
髪を洗うだけのつもりだったのに、着ていた服ごとびしょ濡れになってしまって。
でも、そんな事さえ気にならないくらいに…僕の視線はただ一人をとらえ、見つめていた。
甕を両手で持ったまま立ち構え、目に涙を一杯に溜めて唇を噛む――そんな、君を。
彼女は、キッと僕を見た。
そして再び甕を後ろに振り上げ、僕めがけて中の湯をぶちまける。
「アルの馬鹿!」
そう叫び、倒れたまま動けない僕に空の甕を投げつけて。
慌て、動揺する隙さえ与えず、胸倉を掴み…僕を押さえつけるように彼女はのしかかると、
おもむろに右手を振り上げた。