HELLO,goodbye.
返事をしない楓の手に触れれば、その拳には擦り傷のような跡がたくさん。傷だらけだ。
「ねぇ、楓……答えてよ」
"アイツ"を殴ったの?
何箇所も穴をあけられた体で
あんたはアイツを殴り続けたっていうの?
「…それだけ必死に守っておいて
勝手に死のうなんてほんと、狡い男」
私と楓しかいない静かな病室
そこに響く私の声が震えていて。
「…っ………」
そんな自分が腹立たしくて、同じくらい情けない。
("アイツ"がいなくなったこの世界に、もう怯えるものなんてないはずなのに)
1人が怖い。楓がいなくなることに、とてつもない恐怖を感じる。
「アイツがこの世から消えたって、あんたまでいなくなったら意味ないのよ?楓…」
早く、目を開けて
あんたがいない世界では
息をするのも苦しいの。