残酷Emperor
「あのう、どーもぉ」
恐る恐る、塀のすぐ横にあるベルを数回鳴らしてみる。
てか今時塀のある家って……。
すごいっちゃありゃしない。
シャリン、シャリン、シャリン。
シャリン、シャリン、シャリン。
「あ、あのう〜……」
ガサガサッ
その時、茂みの方から音がした。
目を凝らして見てみると、木の影に隠れ、身長差のある男女が言い合いをしている。
スッと通った高い鼻に、寝癖のついた少し長い黒髪。
私と同じ、、、制服……。
(け、健二〜〜〜〜???)
「け、けんじ……」
私はそう言った口を手で押さえた。
だって、驚く事に……健二の見下ろす先にいたのは……
“あの”桐嶋さんだったのだから……。
健二を見上げる彼女の姿に、軽い嫉妬を覚える。
(何で? 何で二人が一緒なの?)
だが次の瞬間、私は目を疑った。
さっきの疑問もすぐに吹き飛ぶほど、それは衝撃的だった。
健二はなんと……桐嶋さんの腕を引くと、彼女を自分の胸に抱き寄せたのだーー。
え? え、ええ??
ウソ……
嘘でしょう?
私はその場から逃げ出した。
あんな健二、私は知らない。
あんな二人、見たくない。
……二人は一体、どんな関係なの!?
私は瞳から次々と流れ落ちる涙を手の甲で拭いた。
「ハアハアハアッ……」
明日、どんな顔して私は健二に会えば良いの……?
普通になんて、今まで通りなんて、
私にそんな器用なこと、できない……。