みじかいおはなし
ああ、やっぱり、もう駄目だったんだ。
冷静にそう思った。
「お前のことは好きだけど」
さっきの電話でいつもと違うように感じたのも、電話の回数が減ったのも、メールが素っ気なくなったのも、気のせいじゃない。
「彼女としては、好きじゃない」
仕事が忙しいんだ、疲れてるからだって思うようにしていたけど、そうじゃなかった。
「だからもう、終わりにしたい」
彼の一言一言で、すべてが確信に変わる。
本当は、ずっと前からわかっていたのだ。
もう、随分前から、私たちはダメだった。
「本当に、ごめん」
なにも言えないでいる私に、彼は力なく言う。
こんなときに、私は涙ひとつ流せないなんて。
「…もう、どうしようもないの?」
彼が一度決めたら曲げない性格をわかっている癖に、と内心自分に悪態をつく。
「ごめん」
「…そっか、わかった」
私はそう言って、自分を納得させるように頷く。
ああ、本当に終わりなんだなあ。
そう思いつつも、相変わらず涙は出ない。
意外と私は、薄情なのかもしれない。