わらって、すきっていって。


帰り道、いつものお店でドーナツを大量に買いこんだ。もちろんお持ち帰りだ。どうにも無性に甘いものが食べたくなった。

お母さんにあきれられちゃいそうだな。誰がこんなに食べるのっ! て。

1、2、3、4……、わ、どうしよう、12個もある。うちは3人家族なのに。おまけにお父さんは甘いものが苦手なんだ。


「はあ~……」


ここ最近、特にひとりでいるときは、ため息しか出ない。

いますぐにでもドーナツをむさぼり食べたい。もう無理だというくらい、糖分を摂取したい。


だって、考えれば考えるほど、全部がわけ分からなくなるよ。

本城くんの好きな子って、結局誰なんだろう。
どうしてライブや花火大会にわたしを誘ってくれたんだろう。
インターハイのとき、どうしてあんなこと言ったの。

どうして。

……どうして、簡単にキスなんかしたの。


「もうやだよ……」


まるで重い鉛がお腹に詰まっている感じ。

えっちゃんに相談できたら少しは楽になるのかもしれないけれど、なんとなく、どうしてもキスのことを言う気にはなれなくて。

ああ、どうしよう。このままじゃつぶれてしまう。お腹の鉛が思ったよりも重くて、まっすぐ立つのもいっぱいいっぱいいだよ。



「――お姉さん、大丈夫ですかあ?」

「はあ? うるっさいなあ! 触んないでくれる!」

「あ? なんだよ。こっちはせっかく助けてやろうかと思ったのによお」

「キモイの! 美夜に指一本触んな!」


ミヨ。聞き覚えのある甲高い声が、聞き覚えのある名前を呼んだから。

声のするほうに目を向けると、ゆるいウェーブのかかった栗色の髪が、少し目線の低いところで揺れていた。
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