わらって、すきっていって。

ちゃんと答えられた。ありがとうって。とても小さな声になってしまった。

本城くんは大きく息を吐いて、それから遠慮がちに笑った。


「……あー、いますげーほっとしてる、俺」

「え……どうして?」

「だって出てきてくれねーと思ってたよ。安西さんはもう俺の顔なんか見たくないだろうなって。……それくらいひどいことしたろ、俺」


そんなことないよ。好きでもない女の子に告白されて断るのは、当然のことだよ。

でも、本城くんはきょうも謝った。ごめん、って。でもそれは、なんとなく、後夜祭のときとは違う響きに聞こえた。


「なあ、ちょっと、話したい」


落ち着いた、静かな声だった。久しぶりに聴く彼のこんな声に、なんだか妙に緊張して、首を縦に振るのでもう精いっぱい。

近くの公園に行くことになったので、あわててマフラーとコートを装着した。てきとうに選びすぎて、白いコートに白いマフラーになってしまった。雪だるまみたいでちょっと恥ずかしい。



「――いろいろ考えたんだ、俺」


ベンチに腰かけるなり、本城くんがいきなり口を開く。驚いて彼のほうを見ると、彼はすでにわたしを見ていたので、反射的に思わずうつむいた。

しまった。いまのはどう考えても感じ悪いよ。


「後夜祭のあと、霧島にすげー説教されて」

「え……ちーくん?」

「うん。実はあのあと霧島に呼び出されて、そりゃもうこてんぱんに怒られた。霧島ってさ、安西さんのこと、ほんとに大切にしてるんだ」


知らなかった。そんなの全然聞いていない。怒ってくれたって、もしかしてそれって、わたしのために?

そうだ。でもちーくんは昔からそういうやつだ。バカだな、ちーくんが怒ることなんてひとつもないのに。

本当にバカ。もうかっこよすぎるよ、ちーくん。
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